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[wwPDB] Olga Kennard博士を追悼して

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wwPDBは、大英帝国勲章受賞者で王立協会フェローであるOlga Kennard博士の 訃報に接し、追悼の意を表します。 結晶学データベースの開発における彼女の先駆的な研究は、現代の分子構造データアーカイブの基礎を築き、 その後のデータ駆動型研究に大きな進歩をもたらしました。

Olga博士は、低分子のケンブリッジ結晶構造データベース(CSD)を維持するために、 ケンブリッジ結晶構造データセンター(Cambridge Crystallographic Data Centre, CCDC) を設立したことで知られています。 CSDは、Olga博士が1965年に自身の研究グループでの活動を基に設立した もので、低分子の有機および有機金属結晶構造の世界的なリポジトリとなりました。 Olga博士は、結晶がどのように形成されるかを研究するためにこれらのデータを収集し、その調査は「結晶工学」の発展の基礎となりました。 現在、X線・中性子回折分析による100万個以上の構造が収録されており、正確な3次元構造のデータベースとして、 世界中の科学者に欠かせないものとなっています。

CSDの延長線上にある蛋白質構造データへの関心の高まりは、蛋白質構造データバンク(Protein Data Bank, PDB)の設立につながりました。 Olga博士はブルックヘブン国立研究所(Brookhaven National Laboratory, BNL)の Walter Hamilton氏とともにPDBアーカイブの設立を支援し、 当初はブルックヘブン国立研究所とケンブリッジ結晶構造データセンターが 共同でアーカイブを運営しました (1971年の『Nature New Biology』でのPDB発表参照)。 データ処理はブルックヘブン国立研究所で、データアーカイブの整理はケンブリッジ結晶構造データセンターが担当し、 Olga博士とケンブリッジ結晶構造データセンターのデータアーカイブの経験が大いに役立ちました。 現在では、PDBに保存された生体構造に含まれる低分子の検証は、CSDに収蔵されたデータを使ったCCDCのソフトウェアで行われています。

Olga Kennard at the PDB-SwissProt Symposium in Jerusalem in 1996
左から、Helen M. Berman, Janet Thornton, Shoshana Wodak, Olga Kennard(1996年エルサレムでのPDB-SwissProtシンポジウムにて)

1980年代に大阪大学蛋白質研究所がCSDとPDBのデータ配布を開始した当時の担当者である安岡則武名誉教授(兵庫県立大学)によると、 Olga博士は非常に誠実で意欲的な人であったそうです。 1980年代に大阪大学を訪問されて、CSDとPDBの利用について建設的な議論が交わされました。 コンピュータがまだ発達していない時代に、低分子の相互作用を支配する原理を導き出すために、 データを横断的に分析することの価値を見いだしました。 自分の仕事が何千もの論文や調査を可能にしたと主張できる科学者は多くはありません。 CSDの設立と維持に対するOlga博士の先見の明と決意は、今日他の多くの科学者が恩恵を受けている偉人の一人であることを意味しています。

ケンブリッジ結晶構造データベースの創設者であるOlga Kennard OBE FRS博士(1924 - 2023)を記念して もご覧ください。

[ wwPDB News ]


作成日: 2023-03-11

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件を2024-05-01に公開中

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