事例紹介(1uan)

[機能注釈] 1uan

PDBエントリー1uan（好熱性細菌 Thermus thermophilus の HB8株から得られた TT1542 ）は、日本のタンパク3000プロジェクトの一環として構造が解明された、 構造ゲノミクス （SG）対象の１つです[1]。

構造が解明された当初は、PDBエントリーの中に似た配列を持つものはありませんでしたが、分子表面に位置するアミノ酸残基の保存性と対称性から、 N末端付近にある「HPDDGE」ループ周辺が活性部位ではないかと推測されました。 そこで著者たちは、似たリガンド結合部位を持つタンパク質がないかを eF-site データベースを使って検索しました（実際には eF-seek サーバーを使って処理は行われました）。 その結果、下記の酵素がリガンド結合部位を持つものとして検出され、 1uan は２糖を基質として加水分解を触媒する酵素と考えられるようになりました。

• マイコチオール S-共役アミダーゼ（結核菌）
• GlcNac-Ins デアセチラーゼ（結核菌）
• GlcNac-PI 脱N-アセチラーゼ（数種の真核生物）

また、1uan の構造が公表されたことによって、結核菌由来のGlcNAc-Insデアセチラーゼの結晶構造が解明されました （ 1q7t 、 1q74 ）。

これらの構造は Sequence Navigator と Structure Navigator を用いて特定されたもので、 活性部位が配列の保存されたループ領域（1q74の場合、「HPDDES」というアミノ酸配列）の近くにあり、 マイコチオール合成経路においてGlcNAc-Ins デアセチラーゼが２糖からアセチル基を除去するという機能を持つという推定と矛盾しないものです。 現在PDBにおいて、1uan に最も近い構造を持つエントリーは 2ixd（セレウス菌 Bacillus cereus 由来のデアセチラーゼと考えられているタンパク質が、亜鉛原子と酢酸イオンと一緒に結晶化されたもの）です。

[利用方法]

以下に、Structure Navigator で類似構造を持つエントリーを探す手順を、 1uan エントリーを例として説明します。

Structure Navigator トップページで、「PDB Code:」ボックスに「1uan」と、「Chain」ボックスに「A」か「B」のどちらかを入力し、「Search」ボタンをクリックして検索を開始します （なお、1uanA（1uanのA鎖）は1uanBと99%の相同性があります）。

Jobの実行が終了すると、次のように、メッセージウィンドウが表示されます。

Job managerボタンをクリックすると、Job managerウィンドウが表示されます。

Job managerの「Done」リンクをクリックすると、次のようなページが表示されます（最初の数行だけを表示しています）。

最初に見つかったのは 1uan 自身です（最初の検索で 1uan の A 鎖を指定した場合、ここでは B 鎖が検出されます）。 その次に表示される、1uan ではないものは 2ixdA です。 続いて、1q74 と 1q7t が検出されています。 2ixdA のリンクをクリックすると、このエントリーの Mine 概要ページ（summary page）が表示されます。

１ページ戻り、2ixdA のアライメントリンク（一番右列にある「alignment」リンク）をクリックすると、構造類似性の評価結果が表示されます。

配列が保存されたループ領域が確認できましたか？

コンピュータに jV がインストールされているなら、「jV version3」リンクをクリックし、立体的に重ね合わせた図を見ることができます。

配列が保存されたループ領域の位置に活性部位があるのが分かりましたか？

[参考文献]

1. Handa N, Terada T, Kamewari Y, Hamana H, Tame JR, Park SY, Kinoshita K, Ota M, Nakamura H, Kuramitsu S, Shirouzu M, Yokoyama S. Crystal structure of the conserved protein TT1542 from Thermus thermophilus HB8. Protein Sci 2003;12(8):1621-1632.