131: インテイン (Inteins)
このページはRCSBの David S. Goodsell博士による「Molecule of the Month」2010年11月の記事を日本語に訳したものです。転載・引用については利用規約をご覧下さい。
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:翻訳 工藤高裕 (PDBj)
液胞型ATPアーゼ(緑:インテイン部分、赤・青:エクステインとなるATPアーゼ、PDB:1jva)

多くの場合、それぞれの遺伝子は単一のたんぱく質の情報をコードしているが、細胞はこの制限を回避する方法を見出してきた。小さなゲノムしか持たないウイルスは、長いポリたんぱく質(polyprotein)をコードする遺伝子を持っていることがよくある。このポリたんぱく質は酵素によって切断され多数の機能たんぱく質となるものである。細胞が一つの遺伝子から複数のたんぱく質を作るもう一つの方法にインテイン(intein)がある。最初のインテインの事例は、酵母の液胞型ATPアーゼ(vacuolar ATPase、液胞型ATP加水分解酵素、ここに示したのはPDBエントリー 1jva )で見つかった。ATPアーゼたんぱく質をコードする遺伝子の途中には、追加のたんぱく質に関する情報も一緒に埋め込まれている。この埋め込まれたたんぱく質はインテイン(緑の部分)、ATPアーゼの半分ずつはエクステイン(extein、赤と青の部分)と名付けられている。なお、ここに示した構造ではエクステインの小さな一部分しか示していないことに注意して欲しい。たんぱく質が作られる時、インテインは自身を鎖から取り除いて2つのエクステインをつなぎ合わせ(splicing)、機能するATPアーゼを作る。

ホーミングエンドヌクレアーゼ

多くのインテインは2つの部分で構成されている。一つはたんぱく質鎖全体からインテインを取り除く部分、もう一つはDNA切断酵素として働く部分である。この酵素はよくホーミングエンドヌクレアーゼ(homing endonuclease、目標に向かっていくポリヌクレオチド中間切断酵素)と呼ばれる。なぜならインテインをコードしていないDNAに狙いを定めて向かっていくからである。ホーミングエンドヌクレアーゼは自己中心的な遺伝的因子として働き、こっそりとしたやり方でさまざまな遺伝子へ自身を増やしていく。この酵素は既にインテインをコードしている遺伝子は攻撃せず、まだコードしていない遺伝子だけ切断する。そして、細胞が持つ通常の修復機構により損傷部分は修復されるが、この際インテインを含んだ遺伝子が鋳型として使われる。こうして損傷部分が修正されると、遺伝子はインテインと一緒に残ることになる。しかしこれは問題ではない。なぜならたんぱく質が作られる際、インテインは自分自身を鎖から切り出すからである。

実験室でのインテイン

インテインは機構の継ぎ合わせを行う調整たんぱく質であり、これはバイオテクノロジーにとっても役立つものとなっている。働いているインテインを細胞から取り出して新たなたんぱく質へ組み込むことで、特定の機能を持つ自己スプライシングたんぱく質を作ることができる。加工されたインテインは、例えばNMR実験を補助する何種かのラベルを伴うペプチドとつないだり、たんぱく質に非天然アミノ酸を付加したり、更には量子ドット(quantum dot)をたんぱく質につなげたりするのにさえ使われている。また鎖の両端にインテインをつなげて、環状たんぱく質を作るのにも使われている。

大きいのと小さいの

左:通常のインテイン(PDB:1lws)、右:ミニインテイン(PDB:1am2)

全てのインテインがホーミングヌクレアーゼを持っている訳ではない。ミニインテイン(mini-intein)と呼ばれる型には切り出しを行う部分しか含まれていない。ここにその一例を示す。右図左(PDBエントリー 1lws )は通常の大きなインテインで、本来ホーミングエンドヌクレアーゼ部分を含むものだが、図では切り取られDNAに結合した様子が描かれている。右図右(PDBエントリー 1am2 )はミニインテインで、マイコバクテリア属の細菌から得られたジャイレース(gyrase、DNA鎖のねじれをほどく酵素)で見られるものである。これには切り出し反応を行うたんぱく質しか含まれていない。

構造を見る

インテイン(左:反応前 PDB:1jva、右:反応後 PDB:1um2)

上の画像をクリックすると画像を対話的操作のできるモードに切り替えることができます。

2つの液胞型ATPアーゼインテインの構造が切り出し反応の前後の様子を示している。どちらの場合も、いくつかの触媒作用に関わるアミノ酸を変異させて反応を遅くすることにより構造が解けるようにしている。PDBエントリー 1jva は反応前の構造で、インテイン(緑)に小さなエクステインの断片(赤、青)が付加されている。PDBエントリー 1um2 は反応後の構造で、2つのエクステインがつながっている。実際のたんぱく質では、エクステインはこれよりずっと大きく、つながって大きな水素イオンポンプ(proton pump)の一部を形成する。図の下のボタンをクリックして対話的操作のできる画像に表示を切り替え、反応前後の構造を詳しく比較してみて欲しい。

理解を深めるためのトピックス

  1. PDBには様々な種類のインテインの構造が登録されています。それらを見つけることができますか? そしてそれらはホーミングエンドヌクレアーゼを含む構造ですか、それとも含まないミニインテインですか?
  2. インテインの構造にはエクステインの一部は含まれていますか? なぜエクステインを含む構造を決定するのは難しいのでしょうか?

参考文献

液胞型ATPアーゼ(緑:インテイン部分、赤・青:エクステインとなるATPアーゼ、PDB:1jva)
  • S. Elleuche and S. Poggeler 2010 Inteins, valuable genetic elements in molecular biology and biotechnology. Applied Microbiology and Biotechnology 87 479-489
  • Y. Anraku and Y. Satow 2009 Reflections on protein splicing: structures, functions and mechanisms. Proceedings of the Japan Academy, Series B 85 409-421
  • Y. Anraku, R. Mizutani and Y. Satow 2005 Protein splicing: its discovery and structural insight into novel chemical mechanisms. IUBMB Life 57 563-574



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