128: インターフェロン (Interferons)
このページはRCSBの David S. Goodsell博士による「Molecule of the Month」2010年8月の記事を日本語に訳したものです。転載・引用については利用規約をご覧下さい。
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:翻訳 工藤高裕 (PDBj)

紹介

インターフェロン(左上:α PDB:1itf、右上:β PDB:1au1、下:γ PDB:1rfb)

我々の細胞はウイルスに対抗する数々の防御機構を備えている。細胞がウイルスに感染すると、たんぱく質合成の速度を抑える酵素を作りそれによりウイルスの成長も抑える。そして主としてウイルスによって作られた2本鎖RNAを切断する酵素を作る。また感染した細胞はウイルス断片を細胞表面に提示し免疫機構に対して警告も行う。最悪の場合、感染細胞は最終的な犠牲となりアポトーシスによって自滅する。もちろん、このような措置全てを我々の各細胞に対して行うことは通常できない。このような厳格な措置を発動するのは細胞が厄介な状態に陥った時にだけに限っておく必要がある。そこで、ウイルスと戦うモードに移るべき時を知らせる細胞信号の手段として使われるのがインターフェロン(interferon)である。

ウイルス警報

インターフェロンは感染細胞から分泌され、周囲の細胞に対し自身が感染したことを警告する。また免疫機構の細胞がこれにより刺激されると、ウイルス監視の一環としてインターフェロンを分泌する。インターフェロンは細胞表面にある受容体と結合する小さなたんぱく質である。この信号は細胞内へと伝えられ、これによってウイルス防御に関わる何百ものたんぱく質が作られる。細胞が作るインターフェロンにはいくつかの種類がある。インターフェロン-α(interferon-alpha、PDBエントリー 1itf )とインターフェロン-β(interferon-beta、PDBエントリー 1au1 )は最も一般的な型で、大半の細胞種、特に免疫機構細胞によって作られる。これらは成長を止め防御に集中するための基本的な信号を送る。一方インターフェロン-γ(interferon-gamma、PDBエントリー 1rfb )は主にT細胞から分泌され、免疫機構の反応を調節する信号を送る。

インターフェロン治療

インターフェロンが最初に発見された時、ウイルス感染と戦う最適な治療となるように見えた。これは細胞の成長も抑制するので、がん細胞の無制限な増殖を止めるという点においても最適な治療になりそうであった。ところがインターフェロンは非常に特異性が高く、ヒトあるいはその他霊長類由来のインターフェロンしか治療には効果がない。そのため、広く利用され試験されるようになるには1980年代まで待たねばならなかった。この頃になると、組み替えインターフェロンの生産ができるまでに遺伝子工学の手法が発達したからである。今日、肝炎(hepatitis)、その他ウイルスによる感染症、多発性硬化症(multiple sclerosis)、および数種のがんの治療に組み替えインターフェロンが用いられている。ところが、細胞に与える影響が劇的で重い副作用を引き起こすため、今のところ利用される事例は限られている。

ウイルスの反撃

インターフェロン(赤)とその働きを阻害するたんぱく質(青)(PDB:3bes)

ウイルスは巧妙で、想像の通り、様々な方法で進化してインターフェロンによる防御に対抗する。ウイルスによってインターフェロンの活動を阻害する段階は異なり、インターフェロンがその受容体に結合するところから、最終的に核に達する一連の信号伝達経路に至るまでさまざまである。例えば、右図に示したたんぱく質(PDBエントリー 3bes )はハツカネズミ(mouse)に天然痘(smallpox)に似た症状(マウス痘、奇肢症、ectromeria)を引き起こすウイルス(エクトロメリアウイルス ectromeria virus、ECTV)から得られたものである。このたんぱく質(青)はインターフェロン(赤)を捕獲し、受容体へ結合するのを阻害する。

構造を見る

インターフェロン-γ(赤)とその受容体(PDB:1fg9) インターフェロン-α(赤)とその受容体(PDB:2kz1)

上の画像をクリックすると画像を対話的操作のできるモードに切り替えることができます。画像右上の×をクリックすると元の静止画像に戻ることができます。

インターフェロンも他の多くの信号伝達たんぱく質と同様に、同じ受容体2つをくっつけて細胞内への信号を開始させる。インターフェロン-γは2量体たんぱく質で、同じ受容体が2つ両側に結合する(上図左、PDBエントリー 1fg9 )。一方インターフェロン-αは単量体で、受容体が持つ異なる2種類の鎖がそれぞれ異なる部位へと結合する。上図右に示すPDBエントリー 2kz1 は受容体の一方の鎖と相互作用している様子を示している。上図の下にあるボタンをクリックして、対話的に操作できる画像に切り替えてこれら複合体を参照してみて欲しい。

理解を深めるためのトピックス

  1. インターフェロン-γはドメインを交換した2量体を形成します。このことはインターフェロン-αとγの構造中にある鎖の折りたたまれ方を比較すれば分かります。
  2. PDBには他にもインターフェロンの働きを阻害するウイルスたんぱく質が登録されています。それらを見つけて、どのようにしてインターフェロンが働く過程を攻撃しているのかを突き止めることができますか?

参考文献

インターフェロン-γ(PDB:1rfb)
  • S. Bracarda, A. M. M. Eggermont and J. Samuelsson 2010 Redefining the role of interferon in the treatment of malignant diseases. European Journal of Cancer 46 284-297
  • R. M. Friedman 2007 Clinical uses of interferons. British Journal of Clinical Pharmacology 65 158-162
  • S. Pestka, C. D. Krause and M. R. Walter 2004 Interferons, interferon-like cytokines, and their receptors. Immunological Reviews 2004 8-32



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