004: コラーゲン (Collagen)
このページはRCSBの David S. Goodsell博士による「Molecule of the Month」2000年4月の記事を日本語に訳したものです。転載・引用については利用規約をご覧下さい。
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:翻訳 工藤高裕 (PDBj)
コラーゲン

体内でもっとも豊富なたんぱく質

あなたの体内にあるたんぱく質の約4分の1はコラーゲン(Collagen)である。コラーゲンは主要な構造たんぱく質であり、腱を強くする分子のケーブルや、皮膚や内臓を支える大きくて弾力性のあるシートを形成している。骨と歯はコラーゲンに鉱物結晶を加えることによって作られる。コラーゲンは柔らかい組織を保護し、支え、骨格とつなげることで、我々の身体の構造を形作っている。しかし、体内において重要な機能を担っているにもかかわらず、コラーゲンは比較的単純なたんぱく質である。

コラーゲン三重らせん

コラーゲンは3本の鎖で構成されており、それらが互いに巻き付き合い強固な三重らせんになっている。各鎖とも全体は1400個以上のアミノ酸からできているが、ここに示すのは分子のごく一部、各鎖ともアミノ酸約20個ずつを含む部分である。そして、3つのアミノ酸を繰り返す配列がこの頑丈な構造を形成している。3つごとに配置されているアミノ酸はグリシン(glycine)で、これはらせんの内側にぴったり適合する小さいアミノ酸である。残りの大半は、2つの異色なアミノ酸〜プロリン(proline)と修飾されたプロリン(ヒドロキシプロリン hydroxyproline)〜で占められている。ただ普通は、この構造にプロリンが含まれるとは考えないだろう。なぜならプロリンはポリペプチド鎖の中でねじれを作るので、通常の球状たんぱく質には適合しにくいからである。しかし後述の通り、この構造たんぱく質は丁度適切な形状をとっているように見える。

ビタミンC

コラーゲンの安定性に重要なヒドロキシプロリンは、コラーゲン鎖が作られた後、通常のアミノ酸であるプロリンが修飾されることによってできる。その反応には酸素の付加を助けるビタミンCが必要である。ただ残念なことに、私たちは体内でビタミンCを作ることができないため、もし私たちが十分なビタミンCを食事で摂取しなければ、悲惨な結果を招きうる。ビタミンCが欠乏すると、ヒドロキシプロリンの産生が遅れ、新たなコラーゲンの構築が停止してしまう。そして最終的には壊血病(scurvy)を引き起こす。歯が失われたり、あざができやすかったりする壊血病の症状は、日々の活動による損傷や摩耗を修復するコラーゲンの不足によって引き起こされる。

食料雑貨店の棚にあるコラーゲン

家畜動物のコラーゲンは、料理でおなじみの材料である。多くのたんぱく質と同様、コラーゲンに熱を加えるとその構造は完全に失われる。三重らせんはほどかれ、鎖も分離する。そして、変性した多くのもつれた鎖が冷えると、スポンジのように周りの水を吸収し、ゼラチン(gelatin)となる。

構造をみる

コラーゲン(PDB:1cag)

特別なアミノ酸配列が、強固なコラーゲン三重らせん構造をより安定なものにしている。鎖のアミノ酸配列では3つごとにグリシンが配置され、残りの多くはプロリン、あるいはヒドロキシプロリンが配置されている。ここには標準的な三重らせんを示す。これはPDBエントリー 1cag でみることができるだろう。どのようにしてグリシンがらせん内側の小さな屈曲部を形成し、プロリンとヒドロキシプロリンがらせん外周部で滑らかに折れ曲がった構造を作っているのかに注目して欲しい。なおこの構造では、通常グリシンが来る位置のアミノ酸がよりサイズの大きなアラニン(alanine)と置き換えられているため、隣接する鎖との間がより詰まった状態になっていることが見てとれる。

コラーゲン(PDB:1bkv)

ここに示すコラーゲンらせんはヒト由来コラーゲンの断片(PDBエントリー 1bkv )である。上の半分は極めて均一であり、そのアミノ酸配列はグリシンとプロリンを理想的に織り交ぜたものであることに注目してほしい。一方下部は、上部に比べると不均一ならせん構造をしている。なぜなら、等間隔に現れるグリシンの間に、多くの異なる種類のアミノ酸が配置されているからである。

ロープと梯子

基底膜(水色:IV型[[momname-ja:004]、青緑:ラミニン、緑:プロテオグリカン)

私たちは様々な種類のコラーゲンをつくっており、これが成熟した動物では構造を支える長いロープと丈夫なシート状組織とを形成し、発生においては細胞の移動経路となる。これらコラーゲンは、末端部分の型が違うもののいずれも長く伸びた三重らせん構造を持っている。一番単純なものは、平滑末端(ブラントエンド、blunt end)と呼ばれる末端が揃った単なる長い三重らせんである。この「I型」コラーゲン分子は、丈夫な線維をつくるため一本のロープの中の繊維のように隣り合って結合している。これらの原線維(fibril)は、我々が持つ個々の細胞ほぼ全ての間を縦横に行き交っている。一方、上図に示すのは基底膜(basement membrane)で、皮膚や多くの臓器を支える丈夫な面を形成する。この膜の構造基盤をつくっているのは、別の型のコラーゲン「IV型」である。IV型コラーゲンは一方の端に球状の頭を、反対側の端にはさらに続く尾を持っている。頭部同士は強く結合し、くっついた4つのコラーゲン分子は尾部までを含めた全体で十字形の複合体をつくる。これら2種類の相互作用を使って、IV型コラーゲンは広がったネットワーク(水色で示す部分)を形成する。また別の2つの分子、十字のかたちをしているラミニン(laminin、青緑色)と長く曲がりくねっているプロテオグリカン(proteoglycan、緑色)、が高密度のシートを作って空間を埋めている。




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