このページはRCSBの David S. Goodsell博士による「Molecule of the Month」2015年6月の記事を日本語に訳したものです。転載・引用については利用規約をご覧下さい。
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:翻訳 工藤高裕 (PDBj)
終末糖化産物受容体(PDB:4lp5)

最も害のなさそうなものであっても過剰に使えば時として危険を招くことがある。糖がこれにぴったりの例と言えるだろう。 ブドウ糖 (glucose)は我々の各細胞にエネルギーを供給する上で絶対欠かせないものであるため、生き延びるには食物を摂取して継続的な供給を行うことが必要となる。しかしそれをやり過ぎると、過剰となったブドウ糖が深刻な問題を引き起こすことがある。これが特に 糖尿病 (diabetes)を患う人々にとっては顕著である。血液中に糖が過剰にある状態が長年続くと、体中のタンパク質を傷つけ生命をおびやかす病気を引き起こしてしまう。

老化し、糖化するタンパク質

ブドウ糖およびブドウ糖からできる分子はゆるやかな活性のある化合物で、あらゆる種類のタンパク質に含まれる傷つきやすいアミノ酸に付加される。この反応はほぼ以下に示す2つの段階を経て起こる。まず最初に糖がタンパク質に作用し、比較的不安定な結合を作る。そして時間をかけて更なる化学変化を起こし、 終端糖化産物 (Advanced Glycation End Product、略してAGE)と呼ばれるより安定した修飾となる。

AGEに対抗するRAGE

我々の細胞は細胞表面にある受容体でこのAGE修飾を認識する。この受容体は 終末糖化産物受容体 (receptor for Advanced Glycation End Product、RAGE)とそのままの名前で呼ばれている。ここに示す構造(PDBエントリー 4lp5 )には細胞表面から伸びる受容体部分が含まれる。柔軟な接続部分でつながれた3つのドメインで構成されており、一番上に示すドメインが修飾されたタンパク質にあるAGEを認識する。

炎症を起こすRAGE

現在、AGEとRAGEの相互作用がどのようにして糖尿病の合併症に寄与しているのかを明らかにする努力が行われている。RAGEが活性化すると、炎症を促す分子を作る仕組みがより稼働するよう働きかける。不幸にもこの炎症が制御できなくなってしまうと損傷が起きる。そこでRAGEの活動を妨げ、炎症による損傷を減らし、糖尿病の合併症の進行を遅らせる薬の探索が続けられている。

糖化したヘモグロビン

糖化したヘモグロビン(PDB:3b75)

医師は、患者がこれまでにどれだけの糖化ダメージを受けてきたかを調べる糖尿病の検査に ヘモグロビン (hemoglobin)をよく用いる。 この検査では、β鎖の末端に糖が付加された修飾型ヘモグロビン(ヘモグロビン A1c)の量を測定する。同様にして他のアミノ酸にも糖は付加される。ここに示す構造(PDBエントリー 3b75 )では、4量体となった複合体の内部奥深くにあるリジンアミノ酸に糖が付加されている。

構造をみる

AGE修飾を受けたペプチドに結合したRAGE(PDB:2l7u)

上の画像をクリックすると画像を対話的操作のできるモードに切り替えることができます。

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PDBエントリー 2l7u にはAGE修飾を受けたペプチドに結合したRAGEのドメイン一つが含まれる。前節で示したヘモグロビンと同じく、損傷を受けているのはペプチドのリジンアミノ酸である。修飾を受けたアミノ酸にはRAGEの側面にある小さな窪みに結合し、最終的には細胞内部で信号を送り出す。画像下のボタンをクリックして対話的操作のできる画像に切り替え、この構造をより詳しく見てみてほしい。

理解を深めるためのトピックス

  1. RAGEは炎症制御因子としての役割をする中で様々な種類の分子と結合します。例えばS100タンパク質はDNAと結合します。PDBで RAGEのキーワードにて検索 するといくつかの事例を見つけることができるでしょう。
  2. PDBに登録されている構造が終末糖化産物受容体の配列全体の中でどこに位置するのかを見るには、RCSB PDBサイトにある ヒトのRAGEについてのProtein Feature View を見るといいでしょう。

参考文献

  1. M. B. Manigrasso, J. Juranek, R. Ramasamy & A. M. Schmidt 2014 Unlocking the biology of RAGE in diabetic microvascular complications. Trends in Endocrinology and Metabolism 25 15-22 DOI: 10.1016/j.tem.2013.08.002
  2. A. Stirban, T. Gawlowski & M. Roden 2014 Vascular effects of advanced glycation endproducts: clinical effects and molecular mechanisms. Molecular Metabolism 3 94-108 DOI: 10.1016/j.molmet.2013.11.006
  3. 4lp5 L. Yatime & G. R. Andersen 2013 Structural insights into the oligomerization mode of the human receptor for advanced glycation end-products. FEBS Journal 280 6556-6568 DOI: 10.1111/febs.12556
  4. 2l7u J. Xue, V. Rai, D. Singer, S. Chabierski, J. Xie, S. Reverdatto, D. S. Burz, A. M. Schmidt, R. Hoffmann & A. Shekhtman 2011 Advanced glycation end product recognition by the receptor for AGEs. Structure 19 722-732 DOI: 10.1016/j.str.2011.02.013
  5. C. Weykamp, W. G. John & A. Mosca 2009 A review of the challenge in measuring hemoglobin A1c. Journal of Diabetes Science and Technology 3 439-445 DOI: 10.1177/193229680900300306

代表的な構造

4lp5 : 終末糖化産物受容体
RAGEは細胞表面にある受容体で、糖によって修飾されたタンパク質を認識し、糖尿病においてある役割を果たしている炎症反応に関わっている。



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2015-06-01 (last edited: 6 months ago)2016-09-09
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