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PDB:1C9S

タンパク質名

Trp RNA結合減衰蛋白質(TRAP)/RNA複合体

生物種

バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus、好熱性細菌)

生物学的役割

バクテリアはアテニュエーションという転写・翻訳協調制御機構を遺伝子の発現の調節機構の一つとして持っている。大腸菌のトリプトファンオペロンでは、trp リプレッサーによる制御とアテニュエーションによる制御が同時に行われている。大腸菌のアテニュエーションでは、転写された mRNA が構造遺伝子 trpE とプロモーター部位の間のアテニュエーション部位で作るステム・ループ構造を細胞内のトリプトファン濃度に応じて変化させて制御を行っている。トリプトファン過剰時には転写終結のステム・ループが形成されるため RNA ポリメラーゼによる転写がアテニュエーション部位で終結してしまう。それに対してトリプトファン不足時には、バクテリアでは転写産物は直ちにリボゾームによって翻訳されるので、転写伸長の直前でリボゾームがトリプトファンコドンの多い部分でしばらく立ち往生して転写終結構造のステム・ループの代わりに抗転写終結構造が形成され、trpE の転写が行われる。Bacillus subtilis(枯草菌)では大腸菌のような trp リプレッサーによる転写制御機構は無く、trp 遺伝子の発現制御はアテニュエーションによってのみ行われており、またその機構も異なっている。B. subtilis では、転写終結構造を形成するためにトリプトファン過剰時にはアテニュエーション部位に大腸菌や他の腸内細菌には存在しないtrp RNA結合転写減衰蛋白質 (TRAP) が結合する。 TRAP は L-トリプトファンが結合したときにのみ特異的な配列に結合する。そして、リボゾーム結合部位が TRAP と RNA の結合によって下流に生じる RNA ヘアピン中に含まれているため、リボゾーム翻訳レベルでも発現が制御されている。TRAP は葉酸の生合成に関わるオペロン中の trpG の制御にも関わっているが、この場合は TRAP 結合サイト中にシャイン・ダルガーノ配列が含まれており、より直接的にリボゾームの結合を阻害する。

立体構造の特徴

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この立体構造は、好熱性細菌 Bacillus stearothermophilus のTRAP と53 塩基の認識部位の一本鎖 RNA の複合体の立体構造である。TRAP は同一の11個のサブユニットが対称的に直径約 80 オングストロームの環状に並んだ複合体を形成しており各々にトリプトファンが結合している。11個のトリプトファンはそれぞれ、サブユニットどうしの隣接部分で可能な水素結合をすべて形成しており、インドール環はサブユニット間の疎水ポケットにはまっている。標的 RNA は2塩基か3塩基のスペーサー配列によって隔てられた11個のトリプレットから成る。これらのトリプレットのほとんど GAG か UAG で構成されており、各々が TRAP のサブユニットの一つに結合している。RNAは自身で二次構造を取らず、TRAP の周りを巻いている。TRAP は塩基性残基で RNA の塩基部分と相互作用しておりリン酸との直接的な相互作用は無い。

タンパク質構造データバンク(PDB)

参考文献

原論文

  • Antson, A.A. Dodson, E.J. Dodson, G. Greaves, R.B. Chen, X. Gollnick, P.; "Structure of the trp RNA-binding attenuation protein, TRAP, bound to RNA."; Nature; (1999) 401:235-242 PubMed:10499579.

その他

著者:松田 知己


English version:PDB:1C9S